短編映像シナリオ「ちゃーの鰹節の味噌汁」



 ○台所(昼)

   比嘉朋美(44)が鼻歌を歌い野菜を鍋に入

れる。まな板には豚バラ肉。

   朋美、出っ放しの赤い袋の鰹節に触れ、

朋美「あ、いけない」

   机の上の小包を開ける。

朋美「めんそーれ」

   朋美、小包の中の高級ダシと白味噌を

手にとって、話しかける。


○ガラス工房

   製作中の沖縄ガラスなどが並ぶ工房。

   比嘉努(49)、ガラスを徐冷釜に入れる。

朋美「お昼できてるさぁ」

   扉から顔を覗かせる朋美。


○リビング

   沖縄ガラスのカップで水を飲む努。朋

美、並んだ食器に盛り付けていく。

比嘉「新しいデザインさあ。どう?」

   比嘉、机にイメージ画を置く。

朋美「流行さあ。てーげーなことさんけー」

比嘉「手厳し。くわっちぃさびら」

明美「うさがみそーれー」

   朋美、味噌汁を飲む比嘉を見つめる。

比嘉「(首を傾げ)ぬー? 味が違うさ」

   明美、笑顔で手を叩く。

朋美「そう! 本土からのお取り寄せさぁ。

 最近、おダシが流行ってるんだってさぁ」

比嘉「味噌も違うさあ。あふぁぐち?」

朋美「そうそう! これも取り寄せた白味噌

さあ! ……まずい?」

比嘉「(首を振り)まーさん」

   比嘉、ダシの袋を手にとって見ながら

朋美「よかったさー。一袋千八百円さ。それ

 に送料が高いさ」

比嘉「もういいさぁ」

朋美「こういうのも楽しいさ。でも、ちゃー

のおダシとお味噌がおちつくさあ」

   比嘉、イメージ画を見て、頷く。

比嘉「ちゃーのうちなー味がいいさ」

朋美「ちゃーを続けるのもでーじさぁ」

比嘉「朋美ぃ、ちゃーにふぇーでーびる」

朋美「ぐぶりーさびたん。主婦は冷蔵庫の中

見ればなんくるないさぁ」

比嘉「でーじ……あちゃーは鰹節がいい」

朋美「はいさい」

   比嘉のグラスの氷が溶けて音が鳴る。

   出しっぱなしの赤い鰹節のパッケージ。


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